再審開始認める

   


57年前のいわゆる「袴田事件」で死刑が確定し、その後、静岡地裁から再審=裁判のやり直しを認められ、釈放された袴田巌さん(87)について、東京高裁も地裁と同じく再審を認める決定をしました。

袴田巌さんは、1966年に現在の静岡市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定しましたが、2014年、静岡地裁は再審開始を決定し袴田さんを釈放しました。その後、検察が抗告していましたが、東京高裁はきょうこれを退け、一審と同じく再審を認める決定を示しました。

袴田さんの再審をめぐって東京高裁は2018年に一度、再審を退ける決定をしましたが、その後、最高裁から差し戻され、再び審理を行い、今度は再審を認めた形です。

差し戻し後の審理の争点は、事件から1年あまり経って現場近くのみそのタンクからみつかった犯人のものとされる衣類についた「血痕の色」でした。

弁護側は、実験などの結果「1年以上みそ漬けになった血痕からは赤みが消える」として、みつかった当時赤みがあった可能性がある衣類は、捜査側による「ねつ造だ」と指摘。確定判決に合理的な疑いが生じていると主張しました。

東京高裁は今回、こうした弁護側の主張を認め、「1年以上みそ漬けにされた衣類の赤みが消失することは、専門的知見によって化学的機序として合理的に推測できる」「衣類が犯行着衣であり、袴田さんの着衣であることに合理的な疑いが生じる」と判断しました。

今後は、検察側が特別抗告をして最高裁まで争うかが注目されます。


「勝つ日だね」“袴田事件”東京高裁が再審認める
争点だった5点の衣類の判断は…“証拠ねつ造”疑いまで踏み込む


57年前、静岡県の旧清水市で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」。東京高裁はきょう、袴田巖さんの再審=裁判のやり直しを認める決定を示しました。

長年の拘留によって精神的に不安定な状況が続く袴田巖さんに代わって、再審を請求している姉のひで子さん(90)は決定を受け、満面の笑みを見せました。

姉 袴田ひで子さん
「戦ってきたかいがありました。ありがとうございます」

袴田さんはきょう、東京高裁には行かず、支援者と共に外出し、普段通りに過ごしました。

袴田巖さん
「(Q.きょうはどんな一日でしょうか?)勝つ日だと思うね」

1966年、旧清水市のみそ製造会社で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」。逮捕された袴田さんは、1980年に死刑が確定。

犯行時に袴田さんが着ていたとされる「5点の衣類」が事件発生から1年2か月後、裁判が始まった後にみそタンクの中から見つかるなど、不可解なことが多く、長年、えん罪が疑われてきた事件です。

その後、袴田さんは裁判のやり直し=再審を何度も求め続け、再審請求をはじめて33年後の2014年に静岡地裁が再審開始を決定。

記者(2014年3月)
「今、袴田さんが釈放されました。袴田元被告が釈放されました」

袴田さんを釈放し、再審の扉は開いたかに見えました。しかし、2018年、東京高裁は地裁の決定を覆し、再審を認めず。ところがその後、最高裁は「審理が尽くされていない」と東京高裁に差し戻すという異例の展開をたどりました。

最大の争点は「5点の衣類」に付着した血痕の色です。弁護団は、1年2か月もみそにつかりながら血痕に赤みが残るのは「不自然」としてねつ造された証拠だと一貫して主張。血のついた服を1年以上みそにつけても、この写真のように血痕に赤みが残るのか?それとも、黒くなるのか?

▼検察は「赤いまま」、▼弁護側は「黒くなる」と両者の主張は真っ向から対立していました。

東京高裁が下した判断はー

記者
「再審開始です、再審開始」

東京高裁は弁護側のみそ漬け実験について、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と評価しました。

弁護側が今回の審理で提出した血痕に残された赤みが数日で失われるメカニズムを新たに示した鑑定を評価。一方、検察側の「長期間みそにつけられても赤みが残る可能性はある」という主張については否定しました。

さらに「5点の衣類」は第三者が事件後にタンクに隠した疑いがあり、「第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる」と証拠ねつ造の疑いにまで踏み込みました。

検察が期限の20日までに特別抗告すれば、審理の場は最高裁に。特別抗告をしなければ、静岡地裁で再審が開始されます。


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